釣った魚は美味しく食べたいものです。塩焼きにするもよし燻製にするもよし、ですが、料理する前に「魚をさばく」という作業をしなければなりません。簡単に言うと「臓物を取り去る作業」です。これをしないと料理には、かかれません。
しかし川魚をさばいた経験のある方は少ないでしょう。
そこで、今回は「釣った川魚のさばき方」を説明したいと思います。
とはいえ、いわば魚の解体作業ですから多少、グロテスクなシーンも入ります。それは覚悟の上でお読みください。
魚というのは釣りあげたら基本的に臓物を取り去る作業をします。なぜなら臓物を残しておくと、そこから腐ってしまうのと臓物の臭いが魚の肉に移ってしまうからです。これは例え冷凍でカチンカチンに凍らせても同じでマグロ船でも冷凍する前に臓物を取り出す作業をします。そうしないと臓物の臭いが魚の肉についてしまうからです。さんま、鮎などの例外を除いては野生の魚は「臓物を取り出す作業」が必要、と覚えておいて下さい。最初は面倒ですが、一度、覚えたら大丈夫です。
1:準備するものはハサミ、塩、サランラップ
魚をさばくには包丁やナイフよりもハサミの方が遥かに便利で安全です。できれば先の尖ったハサミを用意しましょう。今回はこんなハサミを使います。
また、塩とサランラップを用意して下さい。塩は「一番安いの」で構いません。味付けに使う訳ではないからです。私は燻製や塩焼きに使う塩と、さばきに使う塩は分けて用意しています。さばきに使うのは1kgで100円の一番安いものです。
そして、サランラップはこんな具合に流しのシンクの一角に張り付けておきます。これから臓物を取る作業をする訳ですが、取った臓物は全て、この敷いたラップの上に捨てるようにします。臓物というのはヌルヌルしているので、後でかき集めようと思ってもそう簡単にはいきません、ですので事前にラップを敷いておいて、その上に捨てていくようにすれば終わった後、ラップで包んで生ごみに入れられるので後処理が楽なのです。想像が付くと思いますが臓物と言うのは時間が経つと腐って、ひどい臭いを発します。ですので、出来る限り流し台やシンク内に残さないようにしましょう。そうしないと家族から強烈な苦情が来るのは確実です。
2:魚をさばく
2-1:まずは魚の全身に塩をまぶしヌルヌルを取る
今回、用意したのは写真のイワナ君です。つい、さっき釣ってきたものなので新鮮そのもの。まだ目がパッチリしてます。しかし、このイワナ君、全身がえらくヌルヌルしています。これはイワナに限らずヤマメ、ニジマスでもそうです。川魚の特徴と言っても良いでしょう。
そのヌルヌルを取るために手に塩をたっぷり盛って、イワナ君の全身にまぶしつけ、刷り込むようにしてヌルヌルを出来る限り取ります。
塩で揉めば揉むほどヌルヌルは取れますが100%取り去る必要はありません。「手で持てるくらい」になればOKです。
2-2:さばくためのポイントを確認する
魚をさばく時に覚えておいて欲しいポイントがいくつかあります。
まずは「お尻の穴」下の写真の赤丸にある点みたいな所です。
それからエラブタ、頭の部分の裏にある左右の赤丸の部分です。斜めに線が入っている
ように見えますが魚はここで呼吸しているのです。また左右のエラブタの付け根になっている黄色い矢印の場所も重要ですので覚えておいて下さい。
3:さばき開始!
まずはハサミの一方の刃を「お尻の穴」に突き刺します。
そして、そこからお腹の皮を、どんどん切っていきます。
どこまで切るのか、というとポイントで示した黄色い矢印の場所までです。もう少し。
これ位の位置まで切ります。これでお腹を割くのは終わりです。
次はエラブタを取るための切り込みを入れます。ポイントで示したエラブタの左右の斜め線にハサミを突っ込み中を切ります。これを左右、両方ともやります。
エラブタの線の中は、はっきりと何かが切れた感じはしませんが、それで構いません。
左右のエラブタが切れていればOKです。
次に前ビレを切り離します。
反対側の前ビレも切り落とします。前ビレを切る時はヒレだけでなく、ヒレから先の部分
(上図の赤線部分より先の部分、全て)も一緒に切り落とします。何故なら前ビレより先の
部分(赤丸の部分)は非常に硬く、食べられないからです。
ここまでやれば「切り込み」は完了です。次は「むしり取り」です。
4:内臓を取り出す
切り込みが終わったあとでお腹を広げると、こんな感じです。ちょっとグロいかも。
中の臓物を指でむしり取っていきます。ヌルヌルしているので、やりにくければ塩をまぶします。お腹の臓物を取るのは比較的、簡単です。取った臓物は敷いたサランラップの上に置きましょう。
お腹の臓物を取ったら、次はエラの除去作業です。これがちょっと大変ですのでよく見て下さい。まず、切った前ビレ部分も含めて魚のあご部分にある赤い部分の内臓をまとめて掴みます。掴みにくければ、とりあえず部分的にちぎってしまっても構いません。
前ビレの切り取った部分とあごの下の赤い内臓をまとめて掴む
ヌルヌルしているので掴みにくい……。
掴んだな、と思ったら引っ張り出します。うーん!
段々と出てきたエラ部分です。見ても分かるようにトゲトゲがあったりして、しかも硬いので、エラを残しておくと一番、美味しい頭の部分が物凄く食べにくくなってしまうのです。「頭はちょっと」という方でも、やはりエラは取りましょう。エラは通称「エラモツ」とも言い、内臓の一部だからです。
エラ部分の除去に成功! 取った後の魚の頭部分が、凄くきれいになっていることが分かると思います。これで内蔵の取り出しは終了です。次は水洗いです。
5:水洗い
臓物を取り出した後は、こんな具合です。なんか、少し「食べ物」になってきたような。
身体の真ん中の太い黒線は大動脈です。鮭の場合、この大動脈を慎重に取り出して塩辛にしたりします。メフンと言う珍味ですが、滅多にお目にかかれません。
イワナ、ヤマメ、ニジマスではメフンは出来ませんので、全て水道水で洗い流します。
大動脈も親指でこすり落とします。水道水には塩素が含まれていますので、よく洗うことは消毒にもなります。洗い流しで重要なことは「出来るだけ血を残さないこと」です。
血が残ってしまうと生臭くなってしまうからです。
とにかく「赤い部分」は指で掻き出すようにして、全て取り去ります。
これくらいになるまで水洗いします。元大動脈の有った場所の後部には必ず、以下のように茶色っぽい跡が残りますが、これは血ではありませんので大丈夫です。
あれ? 元お尻の穴の所に少し臓物が。こういうのもしっかり取りましょう。
言い忘れてましたが、取った臓物は早めにラップごと生ごみ入れにいれるなりして処理しましょう。さばいている人は、あまり感じないのですが、実は相当に臭っていますので。
魚をさばく時は換扇機を回し、窓を開けて部屋に臭いがこもらないようにしましょう。
これが今回、取り出した臓物です。一匹で、これくらいは出ると思って下さい。非常に
ヌルヌルしており、指でつまむのも難しいくらいです。ですので、あらかじめサランラップを用意しておくのです。
6:ヒレを取る
水洗いが終わると、だいぶ「食べ物」っぽくなってきますが、まだ「ヒレを取る」という作業があります。尾ビレは残しますが、他のヒレは全部取り去ります。その理由は「ヒレは食べるのに邪魔だから」ということと「ヒレの付け根部分の肉は固いから」です。
ヒレというのは魚にとって手足同然なのでヒレの付け根部分の肉は非常に強靭で骨のように固いのです。ですので、正確には「ヒレ及びヒレの付け根部分の肉」を取り去ります。
まず、お腹の真ん中にある下ヒレです。左右ともヒレと付け根部分の肉を切り取ります。
下ヒレの後ろにあるヒレも同様に切り落とします。本当にハサミは便利。
背ビレも立派ですが切り落とします。ただ、背ビレを動かす筋肉は背中全体と言っても良いので、取り除いたら全体の形がひどく崩れるので背ビレはヒレだけを切り取ります。
見落としやすいのが背ビレの後方にある、この小さなヒレ。あぶらビレと言ってサケ・マス属特有のヒレで、他の魚にはありません。用途不明のヒレで動きませんので付け根の肉は、そのままでヒレだけ取ります。
ヒレを全部、取り終わったら最後に大量の水道水で全体を綺麗にします。これは全体的な消毒の意味もあります。これで「さばき」は全て終了です。
さばきが終わったら冷たい水に漬けておき、少しでも鮮度が落ちないようにします。
さばきは一度に何匹もやることもあるので「さばきが終わった魚を入れておく氷水の桶」
を用意しておくと鮮度が落ちないで済みます。あとは塩焼きにするか燻製にするか、それとも取りあえず冷凍保存するか、それはあなた次第です。
大抵のご家庭では奥様は「魚のさばき」など、やったことがありません。
それらは全て魚屋さんや鮮魚売り場の裏方さんがやってくれているからです。また、魚のさばきは多少なりとも力仕事(特にエラの除去作業)の部分もあり、「手が血だらけ」にもなりますので、あまり女性には向いていません。
つまり「釣った人がやる」しかない、と考えた方が良いのです。これが出来てこそ「一人前の釣り人」とも言えるのです。
ですので、「さばき」をしっかり覚えましょう。それが釣りを長く楽しむ秘訣であると思います。