「フライフィッシング」「ルアーフィッシング」という言葉を聞いたことがあると思います。
これらは、いわゆる「疑似餌」を使った釣りですが主に渓谷でマス属の魚(イワナ、ヤマメ、ニジマス)を釣ることを目的としています。渓流釣りと言われることもあります。
「聞いたことはあるけど、なんだか難しそう」と思われるかもしれません。確かに、これらの疑似餌釣りは少々、経験を要します。
しかし、これらの疑似餌釣りを覚えると「やみつきになる」ほど面白いのです。
実は、その面白さはターゲットとする魚であるイワナ、ヤマメ、ニジマスの習性、特にヤマメの習性が関係しています。
海釣りも楽しいです。ですが、一旦、渓谷でヤマメ釣りを覚えると海釣りにはない独特の面白さに魅了されてしまうのです。
また、ヤマメは美味しい魚で塩焼きにしたり燻製にしたりして食べますが、ヤマメはお店では売っていません。
つまり釣り人だけが味わえる味覚なのです。そこで本記事では初心者でも簡単に挑戦できるルアーフィッシングによるヤマメ、イワナ、ニジマスの釣り方をご紹介します。
目次
1・渓谷(川釣り・渓流釣り)で釣れる魚はヤマメ、イワナ、ニジマス、うぐい
1-1:ヤマメ
ヤマメは別名「川の宝石」とも呼ばれます。体に黒い楕円形の模様が点々と並んでいますので、すぐに見分けられます。ヤマメはサクラマスという鮭のような大きな魚の幼魚で、川の中流から上流域に生息しています。そして成長すると5月から6月に海に降りていき数年を過ごしサクラマスとなって川に帰ってきます。本州以南では、何等かの理由で海に戻れなくなったヤマメが、そのまま、そこで暮らすようになったものが多く、これを陸封型と呼びます。陸封型のヤマメは、非常に敏感で人の気配を少し感じただけで、もう
警戒体制に入ってしまい、目の前にエサが流れてきても絶対に口にしません。
つまり「釣るのが凄く難しい魚」なのです。陸封型のヤマメは、そこで何年も暮らして
おり経験豊富ですので疑似餌でも簡単には釣れず最も難しい釣りと言われます。
それに対し北海道のヤマメは降海型のヤマメで、陸封型に比べると警戒心が薄く、比較的、簡単に釣ることができます。とはいえ、ヤマメは頭の良い魚で、数匹が集まっていても、一匹が釣られると、他のヤマメは「あれは口にしてはいけないものだ」と覚えてしまい、その場所では、もう釣れません。通常、ヤマメのエサ釣りはイクラをエサに使いますが、経験豊富な大きいヤマメは「またイクラか。人間だな」と気づき、食べようとしません。ですので、エサ釣りで釣れるヤマメはまだ経験の浅い10cm程度までの小ヤマメがほとんどです。しかしヤマメは好奇心の強い魚でもあります。見慣れない物が通ると「なんだあれ?」といって近づいてきます。そして、それが食べられそうな物だと思うと食いついてきます。つまり10cm以上のヤマメを釣るには疑似餌で釣る方が有利なのです。そして疑似餌釣りで最も挑戦しやすいのがルアーフィッシングです。
写真は、この記事のために釣ってきたヤマメですが19cmあります。このクラスになると
エサでは中々、釣れないのですがルアーフィッシングでは逆に、このクラスが中心です。
1-2:イワナ
ヤマメは群れる習性があり、一匹いると、必ず周辺に何匹かのヤマメがいます。しかしイワナは「一匹狼」で単独行動です。体全体に白い斑点があり長細い体形をしており下ヒレが黄色いのが特徴です。イワナは非常に獰猛な性質で川を渡っている蛇も襲って食べてしまうと言われています。写真のイワナは24cmありますが、これくらいになると小さいヤマメは食べられてしまうので、ヤマメは群れて行動しているとも言われます。
1-3:ニジマス
イワナ、ヤマメは日本の在来種ですがニジマスは外来種です。
日本の川にいるニジマスは養殖されたものが放流されたか、逃げ出してきたものです。私がよく行く川には、かつて支流にニジマスの養殖場があり(今はもう無い)そこにいたものが野生化したものです。
場所によっては養殖したものを川に放流して釣らせているところもありますが、養殖ニジマスは簡単に釣れますので、あまり面白くはありません。(当たり前ですよね。それまでは人間にエサをもらっていたのですから)身体に黒い斑点があり、体全体が虹のような色に見えるので、ニジマスと呼ばれます。野生化したニジマスはルアーにかかるとジャンプして外そうとします。それで逃げられてしまうことも多いので、ニジマスがかかったら、とにかくリールを急いで巻いて糸をピンと張ってジャンプさせないように頑張る必要があります。外来種とはいえ、日本ではニジマスは、もう、おなじみの魚といってよく、盛んに養殖され食用に供されています。実は回転寿司屋の「トロサーモン」は養殖ニジマスであることも多いのです。
1-4:うぐい(外道)
渓流釣りで唯一、外道となるのが、うぐいです。うぐいは料理に使う地方もありますが、生臭さが強く、一般的には食用にはしません。ですので、渓流釣りでは、うぐいが釣れるとガッカリします。ちなみに手で抑えると「キュー、キュー」と鳴くのが特徴です。
2・ルアーフィッシングに必要な道具は?
2-1:釣り竿とリール
フライフィッシングやルアーフィッシングでは釣り竿のことを「ロッド」と言いますが、渓谷は周辺に木や草が生い茂っていることが多いので、ロッドは1.5mから2mぐらいの短めの物を使います。
リールにはスピニングリール、ベイトリールの2種類がありますが、スピニングリール(写真左)がお勧めです。ベイトリール(写真右)は扱いが難しく相当に練習が必要で初心者の方には向きません。
大きさは型式に2000が入っている、通称2000番台が渓谷のルアーフィッシングにはお勧めですが1500、2500でもOKです。またリールに巻かれている糸は100mもあれば十分です。太さは通常は2号から3号ですが最初から2号か3号の糸が100m、巻かれて売られていることが多いので、それで十分です。ロッドやリールは、いくらでも高級品がありますが、高級品を使えば釣果が上がるという物ではありませんので両方で5000円から10000円くらいで揃えれば十分です。
2-2:ルアー
ルアーフィッシングの釣果はルアーで決まる、といっても過言ではありません。ルアーには基本的に以下の3酒類があります。
・スプーン
金属片にうねりをつけて色付けしたものです。ルアーと言えばスプーン、というほど代表的なルアーです。
スプーンのお勧めは「マジョーラミュー」のフォレストです。単純な形ですが一番人気です。フォレストは10個セットで売っていることが多く一個あたりが安いのも、うれしいところでロストも怖くありません。
・プラグ
小魚を模したルアーです。木製で引っ張ると水の中に沈むようになっています。プラグを使ったルアーフィッシングは独特のテクニックが必要ですが愛好家が多いルアーです。
プラグでのお勧めは、何と言っても「Rapala(ラパラ)」です。特にエックスラップシリーズのXR4は非常に評判が良く、一番のお勧めです。
・スピナー
スピナーの特徴は羽のような金属片が付いていることです。スピナーを水中で引っ張ると、この金属片が水流でクルクルと回転し、まるで水生昆虫が泳いでいるように見えます。
スピナーの一番の、お勧めは「ブレットン」です。スピナーは各社から出ていますが、老舗メーカーであるブレットンのスピナーは実績No.1です。私も色々と試したのですがブレットンのスピナー、特に通称「ゼブラ」と呼ばれる縞模様のスピナーはダントツの実績を誇っており自信をもってお勧めできます。(本当は秘密にしておきたい情報です)
この3種類のルアーは、それぞれに「合った場所」という物があります。そして渓流釣りの初心者の方に一番、お勧めできるルアーはスピナーです。スピナーはリールを巻くだけでよく、また羽が回転する時に水中で僅かな音を発するので魚に気づかれやすいのです。
なお、釣りでは根がかり、がつきものです。投げたルアーが水中の岩の間に挟まったり、木や草にからまってしまい、取れなくなることがあります。こういったロストは必ず発生しますのでルアーは複数個、用意していきます。ですので、「ルアーを納めておく入れ物」が必要です。通称、タックルボックスと言いますが、私は下記の写真の様な小さなものを使っています。最初はこれ位で十分です。
2-3:ウェーダー
ウェーダーとは図のような下半身全体を覆う「大きな長靴」です。渓流釣りでは川の中に入るのは「当たり前」のことです。先にご紹介した通りヤマメは一匹釣れたら、もう、その場所では釣れません。従って釣り人が移動するしかないのです。そして渓流は「大自然の川」ですので、道がある訳ではありません。従って、どうしても渓流釣りでは川の中を歩かざるを得ないのです。もちろん、できるだけ安全な場所をつたって移動しますが、流れが緩くても水深50cm、60cmという場所を渡らなければならない場合もあります。ですので、普通の長靴ではダメなのです。ウェーダーは5000円程度で買える物で、そんなに高いものではありませんが、渓流釣りでは必須アイテムなのです。
2-4:たも網と軍手とハサミ
渓流釣りで釣れる魚といったら小さいんでしょ? なら、たも網なんていらないんじゃないの?」と思われがちですが実はそうではありません。とんでもない奴が釣れてしまう可能性が十分にあるのです。例えば写真のニジマスは、この記事を書くために必要なヤマメの写真を撮るために行った時に、一緒に釣れたニジマスですが35cmあります。これだけ大きいと、たも網無しでは、とても取り込めません。
なお、たも網には目の細かい繊維製の物と目の粗いラバーゴム製があります。ラバーゴム製のたも網は魚体(特にヒレ)を傷付けないためのものでキャッチ&リリースの方向けです。
ヤマメ、イワナ、ニジマスは全て魚体表面に「ぬめり」が有り、釣れた魚を素手で掴むと滑ってしまい掴みにくいので、最初は「目の細かい、たも網」で釣れた魚を取り込む方法がお勧めです。また、たも網の中の魚を掴むのも素手では難しいので利き手の反対側だけ軍手をしていくことをお勧めします。軍手だと容易に掴めます。ただ、軍手は針をひっかけやすいので注意が必要です。軍手は「使い捨て」ですので針が取れない場合は軍手をハサミで切ってしまった方が早いです。また釣り糸にルアーを付けた後の、あまり糸を切ったりしますのでハサミも必需品です。必ず用意して行って下さい。
たも網は必ず、取っ手の紐をウェーダーのベルト等に、がっちりと固定して下さい。
「気が付いたら、たも網が無い」というケースは結構、多いのです。川は流れが有りますので、どこかに結び付けておかないと、いつの間にか流されていってしまうのです。
2-5:クーラーボックス
釣った魚を持ち帰る場合には必ず必要です。色々なタイプの小型のクーラーボックスが
ありますが肩掛け式で、あまり重くなく邪魔にならない物を選びましょう。中に1日持つ冷却材を入れておけば大丈夫です。大型の物は必要ありません。写真のクーラーボックスは私が使っているものですが、横幅はフタの部分で24cmです。これでも「大物」が来ても収められるので心配はいりません。
2-6:水筒 川の水は飲まないように
渓流釣りは川の中を歩き続けます。(基本的に上流から入り下流に向かって歩きます)
これは結構な運動量になりますので、必ず水分補給用の水分を用意して行って下さい。
川の水は、決して飲まないで下さい。渓流釣りに行く川は周辺に野生動物がいることが多く、野生動物は何等かの寄生虫を持っていることが多いのです。そして野生動物にとって川は「水飲み場」ですので、川の水に寄生虫が流れ込んでしまうことがあるのです。
野生のヤマメ、イワナ、ニジマスも寄生虫の危険があるので「生の刺身」で食べる人はいません。必ず火を通してから味わいましょう。そうすれば寄生虫の問題は100%排除できますので全く心配はいらなくなります。
3:渓流釣りにおける注意点
渓流釣りは大自然の中での釣りですので、注意すべき点がいくつかあります。
3-1:クマ
最大のリスクはクマに遭遇する危険です。本州ではツキノワグマ、北海道ではヒグマの危険があります。しかし熊も人間が怖いのです。ですので、あらかじめ熊鈴と呼ばれる鈴を身に付けて、歩くたびに鈴音が鳴るようにしておけば、熊の方で避けてくれますので、まず出会うことはありません。必ず用意して行ってください。熊鈴にはホイッスルが付いているものもあり、遠くに熊がいたらホイッスルを吹いて追い払うこともできます。
なお、川に行く山道を車で走っていると、ごくまれに「道の真ん中」にクマのうんちが有ることがあります。これはクマが「これから先は俺様がいるから入ってくるな」という合図です。もし「道の真ん中に黒いうんちの塊」を見つけたら、その場所での釣りは止め、Uターンして下さい。また、釣りをしている最中に「物凄く臭い」匂いを感じたら、すぐに来た道を戻り避難して下さい。クマが、すぐ近くにいる証拠です。クマは毛で覆われていますが、お風呂に入ったりはしませんので物凄く臭いのです。例えは悪いですがホームレスの方が1年間、お風呂に入っていない匂い、といった方が分かりやすいでしょうか。最も、そんなことは一生に一度あるかないか、というレベルのことですので大袈裟に心配する必要はありません。ですが、一応、覚えておいた方が万が一の場合に役に立ちます。熊鈴を付けて鳴らしていけば、熊に遭遇する危険は、ほぼ100%回避できます。
3-2:漁業権
本州以南の河川は、ほぼ100%、漁業権というものが設定されており遊漁券を買い、漁業組合が決めたルールに従わなければなりません。ヤマメは15cm以上、ニジマスは20cm以上は釣っても良い、それ未満は全てリリース、というのが多いので巻尺を持参して下さい。
また渓流釣りをしても良い期間も決められているので、事前に確認してから行って下さい。
一方、北海道の河川は漁業権が設定されているのは、ごく一部の河川だけで、他の河川は全て漁業権が設定されていませんので許可の必要もサイズ規制も期間制限もありません。
但し、北海道は条例で5月と6月はヤマメの捕獲は禁止されています。またサクラマスというヤマメの親魚は河川での捕獲が全面的に禁止されていますので注意して下さい。
渓流釣りはルアーフィッシングから始めましょう。何と言っても「簡単で面白い」からです。できれば最初は経験者に教えてもらった方が確実ですが、いなければ自己流でも構いません。やっていれば自然に分ってきます。「最初の一匹」をルアーで釣り上げた瞬間から、きっと渓流のルアーフィッシングの魅力に取り付かれてしまうでしょう。
そして「最初の一匹」を釣り上げるコツは……それは次回パート②で、ご説明致しましょう。
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